レトロで可愛い!古き良き「昭和型板ガラス」



立冬を過ぎ、伊那谷北部にある我が家も、朝晩は随分と冷え込むようになってきました。

庭の草木に霜が降り、落ち葉がパラリパラリと乾いた音をたてて舞い落ちる。

そんな朝の光景を見ながら淹れた寝覚めのコーヒーからも、湯気がいつも以上にモワモワと立ちのぼっていて、こちらもすっかり晩秋の様相です。

とはいえ、天気が良い日の昼間は「小春日和」という言葉がピッタリの暖かく過ごしやすい気温になることも多いため、寒さはまだまだ序の口だなぁと感じます。

そういえば、欧州にも「小春日和」と似た意味の言葉があるのだとか。

9月下旬~10月のはじめ頃、秋のさなかに一時的に夏のように暖かくなることを、「老婦人の夏」というのだそうです。

なんだか詩的で、美しい言葉ですね。

歳を重ねて気付いた、古き良き、美しきモノ



「美しい」といえば、今の家で暮らすようになってから、改めて綺麗だなぁと感じているものがあります。

それが、昭和の時代に作られた「型板ガラス」。

型板ガラスというのは、「“ロールアウト製法”という方法でガラスの片面に型模様をつけたもの」だそう。
百聞は一見に如かず…ということで、コチラをご覧ください↓


「あぁ、コレね!よく見るよ」という方が多いのではないでしょうか。

そうです。
“昭和のお家”の窓や建具に高確率で使用されている、あのガラスです。まだまだ現役で活躍しているお家も多いですよね。今は亡き祖父が戦後しばらくして建てたという実家はもちろん、築数十年の我が家でも、あちこちで使用されています。

子どもの頃は別段気に留めていなかったのですが、歳を重ねた現在では、不思議と愛着を感じるようになりました。

この昭和型板ガラス。
多種多様な模様があるのですが、つい先日それぞれの模様にきちんと名前があると知り、ちょっと驚きました。物心ついた時からそこに在るのが当たり前過ぎて、「名前がある」という至極当然のことにすら考えが及んでおらず。

そりゃあ、ありますよね、名前…。

これは調べてみるしかない!
…ということで、今回は我が家にある昭和型板ガラスの中で、「おそらくコレかな?!」と名前が仮確定したものをいくつかご紹介します。

薄暗かったり斜めに写っていて見難い写真ばかりですが、ご容赦頂けたら幸いです。

※名前はyoshinaga調べ(間違っていたらすみません…!)。

我が家の「昭和型板ガラス」コレクション


「ちぐさ(千草)」
最初に見た時、とんぼ柄かと思いました。


「ヒシクロス(菱クロス)」
現在でも、こういう模様のガラス用目隠しシールが販売されていますね。


「いしめ(石目)」
“テントウムシダマシの食害痕”にも見える…?!


「よぞら(夜空)」
この模様、特に目にする機会が多いような気がします。人気だったのでしょうか。


「らんまん(爛漫)」
「爛漫」とは、「花が咲き乱れているさま」のこと。庭に面した広縁の掃き出し窓にこの模様が用いられているところに、この家を建てた方の想いが込められているような気がしました。


「こと(古都)」
個人的に「好きな模様ランキング」トップ3に入る模様。カチリとしていて、なんだか可愛い。昭和に作られたものながら、どことなくデジタルというか、近未来チックな雰囲気も感じる不思議な模様です。


「ささ(笹)」
お茶の間や座敷を仕切っているガラス付き襖の、ガラス部分ほとんどがこの模様。静かな竹林に建つ茶室にいるイメージだったのかな?(竹ではなくて笹ですが…)


「サーキット」
昭和型板ガラスは海や草木など自然物の模様が多い中、なぜ道路をガラスの模様にしようと考えたのか少しだけ気になります…。


「みどり(緑)」
我が家にある建具の中で1番のお気に入りが、この「みどり」模様のガラスが使われた木製の引き戸。木枠部分の造作も凝っていて可愛いです。

番外編:実家の「昭和型板ガラス」コレクション


ここからは、番外編として実家で撮影した写真にたまたま写っていた昭和型板ガラスをご紹介します。


「さくら(桜)」
お茶の間の建具に使用されています。一年中、お花見状態。


「なると(鳴門)」
「昭和型板ガラス」と聞いて真っ先に思い浮かべた模様が、この「なると」。子どもの頃、唯一ほんの少しだけ気に留めていたガラスでした。

その理由は、この模様が当時憧れだったチョコレートの形によく似ていたから。

平仮名の“ぬ”の形に似ている(と、幼い私は思っていた)そのチョコレートのことを、勝手に「“ぬ”のチョコレート」と呼んでいました。

「“ぬ”のチョコレート」は他のチョコ菓子に比べると高額で、駄菓子コーナーではなくチョコレートコーナーに置かれていたっけなぁ。私にとっては、たまにしか食べられない憧れの高級チョコでした。

ちなみに模様の名前が「なると」と知った今でも、「“ぬ”のチョコレート」の正式名称は知らないままです。今も販売しているのかな…?


話が逸れてしまいましたが、あとは我が家にもある「よぞら」、「こと」、「サーキット」の他…

・ぎんが(銀河)
・もみじ(紅葉)
・わかば(若葉)
・つた(蔦)
・からたち

…にも、見覚えがあります。
写真をお見せできなくて残念なのですが、どれも個性的で綺麗な模様です。

特に「ぎんが」が、すごく可愛い!
その名の通り瞬く星々を彷彿とさせるロマンチックで素敵な模様で、この模様を考えて名付けた方の感性に惚れ惚れしてしまいます。

今や入手困難。大切にしたい昭和型板ガラス


近年「レトロで可愛い!」と人気が出ているものの、既に製造が終了しているものがほとんどで希少性が高まりつつあるという、この昭和型板ガラス。

以前、鳥が突っ込んできてガラスが割れてしまったことがあるのですが(鳥は無事)、業者さんに元のガラスと同じ型板ガラスを購入できるか確認したところ、「現在はもう取り扱いが無いので難しい。特に新品は、ほぼ無理だと思う。」との回答でした。

こんなに素敵なのに、入手が困難とはなんとも残念。


レトロな我が家によく似あう、古き良き、そして美しき昭和型板ガラス達。

今後もし窓や建具を交換することがあったとしても、ガラスは何らかのカタチで残したいものです。